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牧野圭祐先生の( @mkn_kei )の『月とライカと吸血姫』と裏方の美学

これを読まずに死ねるかとか、世紀の名作だよ、とは煽りません。「そうかな」ってわくわくして、期待値が高すぎて作品とシンクロできないのももったいないだろうから。

月とライカと吸血姫 (ガガガ文庫)

 2/7に読み終えたので、そろそろ一月が経とうとしています。読み終えて何が残ったのでしょうか。照れ隠しに咬むわよと威嚇し、血液の代わりに牛乳を愛し、ふて寝する時は棺桶ベッドを使用する可愛らしい面もありつつ、「人が死ぬのは困る。犬なら構わない。吸血鬼は人ではない」という理屈で、実験体を引き受けて、それでも宇宙へ行きたい健気なヒロインが主人公です。彼女の魅力は、きっと他の人が語り尽くしてくれると思うから、他のこと書きます。

 

裏方を選ぶキャラはどうですか?

 ラノベの古典になるこれ、主人公のパーンは無双しません。最短距離で英雄を目指すのではなくて、王や指導者の立場を引き受けると、そこからこぼれ落ちてしまう人がいることに気がつき、アシストに徹し、諸国を回ります。その国のトラブルに目処が立つまでは主戦力として戦い、目処が立ったらそっといなくなります。彼のお父さんもそういう設定があるのですけど、損な道を行くというか、裏方として頑張り結果を出すキャラなんですよね。

『月とライカと吸血姫』に戻すと、ヒロインの担当に「左遷」されたキャラクターも、この物語では裏方として頑張っていますね。ヒロインがどういう人なのかだんだん分かるごとに、国の面子で死なせてなるものかと、出来ることを模索します。ロードスのパーンは左遷されてないし、周囲と連携しつつ遊軍的に火力出せる立ち位置だから、色々違います。でも、「損な役回り」を腐らずに生きる点は共通するかも。

淡いラブコメもありつつも、戦う彼女を守るために俺は何も出来ない、ではなくて、「左遷」されるまでに獲得してきたスキルを、ヒロインの生存のために積極的に手渡していきます。私は彼のこと、いいヤツだなと受け止めました。

国の思惑はあるし、色んな大人たちの思惑もあるし、「宇宙へ行きたい」動機も様々だけど、彼がアシストしなければ、例えば「吸血鬼は人と似ていて気持ち悪い。命ということなら犬だって可哀想だ。気の毒だけど実験動物として死んでくれ」って思える人だったら、この物語は成立しなかったでしょう。

 

爽やかで、微笑ましくて、夢がある。

著者さんの執筆動機とか存じ上げないから、単なる推測なんですけど、例えば『86―エイティシックス― (電撃文庫)』は著者さんが書きたいこと好きなことを盛り込んだデビュー作ですし、ラノベ媒体だからこそ出た作品だと思うのです。『月とライカと吸血姫』も、著者さんの書きたいことが盛り込まれてると私は感じました。

 

この物語を読み終えて、作品世界を思い出す時、温かな記憶として蘇るから、私はこの作品を読めて良かった。健気なヒロインと良い奴のコンビが出て来る、爽やかな作品です。