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【ハチクロ】『はちみつとクローバー』を読み返して、脇役の配置が絶妙だし、一番一般人に近い竹本くんの存在が良かった。

うっかり3月のライオンを再読してしまい、ハチクロが読みたくなりました。ハチクロの成功という実績があるからこそ、羽海野チカ先生は3月のライオンを自由に描けるのでしょう。ハチクロは「少女漫画」とか「恋愛モノ」といった制約の中で、生み出された作品のように見えました。

ハチミツとクローバー 10

「ずっとは続かない心地よい人間関係」や「楽しい学生生活」のこと

この作品は切ないイメージがあって、それは甘酸っぱい恋模様に原因があるのかと思っていたけれど、それだけではなくて、「否応なく大人にならざるを得ない」人生の季節に、迷ったり傷ついたりしながら踏み出していくことも描かれていることも、切なさの原因かもしれないですね。この楽しい時間がずっと続けばいいのにと。

それは竹本くんたち世代だけでなく、花本先生・原田さん・リカさんの世代だって、あの居心地のいい空間がずっと続いて欲しかったかもしれない。でも、続くわけないし、続かないことは登場人物も理解している。

駆け引きやズルいことする人がいなかった

真山さんに断られているのにズルズルいってしまう山田さんにしろ、結局真山さんを断りきれないリカさんにしろ、「怖い」人はいるけれど、ドロッドロの展開とかにはならなくて、暴力とか、ライバルを蹴落とすために罠にハメるとか、そういう要素は出てこないのですね。おかげで、安心して読めるし、登場人物たちを好きでいられる。

1歩先に大人になった人たち

花本先生が、リカさんがらみで自分たちの代の物語を語ってくれること。

真山さんがお世話になっているデザイン事務所にいる先輩たち。

同世代だけ出すのではなくて、彼らを脇役に置くことで、主役たちの五年先・十年先を描かなくても、想像する余地を埋めやすくなる。

5人の中で一番、一般人に近い竹本くんのこと

森田さん・真山さん・山田さん・はぐちゃん・竹本くんと、主役級の5人を並べてみると、竹本くんと森田さんが両極端の存在ですよね。

  • コメディーリリーフ兼芸術と金儲けの異能持ち森田さん
  • 才能特化型のはぐちゃん
  • コメディーリリーフ兼恋する乙女の山田さん
  • 早く大人になりたい常識人に見えてストーカー癖のある真山さん
  • 才能もお金もなくやりたいこともなく何者でもない恋する青年竹本くん

 例えば、こんな感じで。かかと落としが得意だったり、ユニコーンが護衛についてたりする人は少ないかもしれないけど、恋する乙女はたくさんいますね。ストーカー癖のあるイケメンは困るけど、真山さんみたいな選択をする人もいるでしょう。才能のある人は、はぐちゃんみたいな苦しみを生きるのかもしれない。やりたいことを見つけられなくて苦しむ人も多いでしょう。ただ、森田さんの異能は、さすがにいないですよね。8年かけて卒業して、また8年通うつもりとか意味がわからない。

「はぐちゃん」「森田さん」「竹本くん」の人生がメインで、山田さんと真山さんは例えばどんな子供時代だったのかとか描かれていないです。1巻の時点では頼りなかった竹本くんが、青春の塔をぶち壊したり、北への自転車旅行(自分探しの旅)に出たりして、もがいてもがいて、やりたいこと見つけてきますね。充実した学生生活だと思う。それでも、好きな子のピンチに対して、自分が無力であることを突きつけられる。

ハチクロが優しいのは、「経済力が無いから嫌だ」と誰かに言われるのではなくて、竹本くんが自分ではぐちゃんを支えるとしたらどうしたらいいと考えた結果、力が足りないことに気がつける点ですね。新卒の段階で、いきなり他人の人生を背負ってリハビリに付きそう時間や精神的に支えることなどをやるのは無理だし、竹本くんが出来ないのは当たり前なんだけど、彼が自分の無力さに打ちのめされたことは察します。

「自分探し」の必要は無いし、才能もお金もあるけれど、はぐちゃんがどう生きたいのかまで想像することが出来ない、森田さんを出したのも凄い。

結局、おさまるところにおさまるわけですが、時間が過ぎて、傷が癒えて、彼らがまたお茶でもしてくれていたらいいなと思うのです。

この漫画は恋愛を扱ってるし、恋愛を通して人生のことも考えています。

それだけじゃなくて、一番一般人に近い竹本くんという存在が、10冊を通してどう成長したのかを目撃できる作品でもあります。それぞれのキャラクターが成長するけれど、竹本くんが一番わかりやすいから。