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2周読んだら、鷹人が濃すぎて主役が食われ、「鷹人の彼女」に変化した件(ナノカノカレ)

漫画は好きですが、少女漫画はほとんど知りません。『ナノカノカレ』冒頭の浮気とか無理だから(マックで、ナノカが背中越しに、隼太の別れ話をきいてるとこ)あたりで、ドロドロ怖いってそっ閉じしました。しかし好奇心には打ち勝てず、あとナノカノカレってイラストは正統派少女漫画でとても綺麗だから、手に取りやすい面もあり一気読みしました。

自分が親しんできた文化とは異なる文化圏なので、興味深かったです。

 

この文章にはネタバレが含まれています

 

[まとめ買い] 菜の花の彼―ナノカノカレ―(マーガレットコミックスDIGITAL)

初読時

「鷹人ないわー」「おーじもっとないわー」「菜乃花もどうかと思うわー」と、ガクブルしながら味わいました。ドロドロと聞いていた割には、例えば望まない妊娠とか婦女暴行とか中絶とか、性的なドロドロは出てこなくて、主に「恋心」が主役でしたね。痛いのも怖いのも苦手な私でも、読めました。同じ高校生を題材にした作品でも、体はつながってみたけど、さみしい気持ちは満たされないままで、みたいのもありますよね。

本書は今のところ性の話を持ち込まないので、シンプルでいいです。人間の心理とドラマを描きたいのかなって見ています。

もし私が菜乃花の家族なら、「気持ちは分かるが、落ち着いてよく考えなさい。隼太君、いい子じゃないか」って言うと思う。

対して、もし私が隼・鷹の家族なら「気持ちは分かるけど、その子、ファム・ファタルの素質ありそうだし、大怪我して破滅するよ。まだ精神的に幼いから、成熟するまで根気強く付き合う覚悟が無いならやめときな」って言うと思う。
保護者目線ですよね。

常識で考えて、隼太は優良物件だし、10年先は相当いい男に育つと思う。ただ、平凡な毎日は尊いし、それを維持することの大変さもあるけれど、刺激足りないから退屈するかもしれない。三次元でこれやると破滅するやつですね。
フィクションは、動物園みたいなもので、安全な場所から「しろくまだねー」「虎おおきいねー」と見るような感じで、どんな出来事であれ疑似体験することができるのだから、鷹人が次に何をやらかすかなと楽しむのも、分かります。フィクションくらい、好きにさせてくれってあるし。

恋のライバルだけど補い合う2人

隼太と鷹人は、基本と逸脱の関係にありますね。音楽の素養が無い人が無茶苦茶に楽器を鳴らせば騒音だけど、基本が出来てる人が扱えば、クラシックの前衛作品なり、ジャズなり、逸脱する面白さを味わえますよね。

2周目を読んでみた

公式の惹句には「とうとう鷹人が素直になる」みたいな感じで、「素直になれない男の子♡」って扱いなんですけど、不器用すぎますよね。私にとって、好きな子をかまって嫌われたり、髪の毛引っ張って叱られたりしたのは小学1年生の頃の出来事です。さすがに中学生になると、告白するとかおつきあいするとかは別にして、「ああ、私はこの人のここに惹かれるな」「何々さんは優しいとこあるな」「毅然としてとっさの対応できて凄いな」とか、中学生なりに言語化してました。
なので、「ナノカを見るとイラつく」ってとこからスタートして、「これが初恋だった」と気がつくときにはもう、手遅れだった、鷹人は「お前頭いいのに大丈夫か」って心配になります。簡単に、サイコパスに洗脳されてキラッキラになってましたし。病むほどに輝くってどうなの! *1 鷹人は打たれ弱いので、セキュリティホール対策どうにかしてほしいですね。マイクロソフトにお願いできないかな……。「ちょっと待ってろ、WindowsUpdateかける。更新中です電源を落とさないで下さい」とか、鷹人が言い出したら、それはそれで楽しい。

2周目を読むにあたり、「鷹人はなぜナノカと話さないのか」を意識して読みました。読んでも読んでも答えは出てきません。70話で、クリスマスのお話の後で、ナノカから「聞いて」(一人で決めないで)って、言って貰えましたね。あれ実質、雨傘よりもずっと、鷹人にとってはプレゼントだったと思うな。「ああ、交際相手にきけばよかったのか」って鷹人はここで気づいたのなら、16年前後、そういう「概念」を持たずに生きてきたわけで、お前よく生きてきたな……。と、驚かされたのでした。

恋愛に関する特化型の舞台装置

石田衣良IWGPが分かりやすい例だと思うんだけど、あれって「ミキサー」なんですよね。スムージーとか作る、ミキサー。時事ネタと著者の解釈を放り込むと、マコトやキングたちが走り出してくれる、優秀な舞台。ナノカノカレの場合は、2巻前半の段階で、この舞台装置が出来て、恋愛に関することなら、純愛だろうが略奪だろうが心中だろうが、なんだって描けるぞこれ、と著者さんが粛々と組み上げていく土台の凄みを感じたのでした。
画力が高いから最小限のセリフと、絵、とくに表情や、「幸せなコマ」と「絶望のコマ」を対比させるとか、表現力がずば抜けているので、この作品は心理描写が楽しいです。大人になっても鷹人みたいな人はいるし、隼太みたいな人も少しはいるから、痛い思いも楽しい思いも通ってきた大人が読んでも鑑賞に耐える作品ですね。例えば、ヲタ恋とかの世代を舞台にすると、話がややこしくなるので、「恋に関する心の働きとドラマ」に焦点を当てるには、十代の彼らに演じてもらうのがいいと思いました。

鷹人が「表現者」として優秀だった

もし実写化するとしたら、たぶん鷹人役が一番難しいと思う。ここ演技力が身についてなくて事務所が押してるイケメンとかにやらせると、ただの変な人になっちゃうから。それこそ、オージとの区別だって怪しい。
ナノカがいるから鷹人はおかしくなるし、隼太が常識的な部分・明るい青春的な部分を引き受けてくれるから、鷹人は安心して暴れ馬やれるわけですよね。
口下手とか不器用というレベルではなくて、「ああ、俺、好きだったんだ」って気がつくのに時間がかかりすぎたり、「終わらせたい」ってナノカに言われてるのに、終わりにすることが出来なくて、もがいてもがいて、奇行に走ります。奇行に走ったり壊れる鷹人を見てナノカが「そこまで私のことを」って思ってくれるなら救われるんだけど、意訳すると「迷惑です」って言われるので、さらに迷走してしまいます。

かつてイケメンがここまで塩対応される作品があったでしょうか。

大抵の人は恋するとおかしくなりますが、「君は小学生か」ってレベルから、色んなことやらかして見せてくれる鷹人は、「男のバカで可愛い部分」と「男の嫌な部分」をちゃんと見せてくれます。彼抜きで、この物語は成立しないので、変なやつだと思っててごめん、君は見方によっては優秀なヤツだったんだねと思うことでした。

怒られちゃうかもしれないけど

鷹人と、隼太が、そしてサイコパスがナノカに惹かれる理由は分かります。書いてあるから。でも、一人は変な虫とはいえ、一応3人が取り合うくらい、ナノカは魅力的な存在のはずです。悪い子じゃないし、自分の苦手なことを意識して「変わりたい」って頑張る姿も見てきたけれど、何もかもかけて取り合うほどのヒロインなの? という疑問は拭えないんですよね。まだ純粋なティーンエイジャーだからこそ、惜しげもなく「何もかも賭けて」しまうのかな。

一周目の時点では、鷹人やサイコパス変だからナノカ自衛してって思ったけど、2周目を読んでみると、鷹人にしろ隼太にしろ、いいヤツなので、ナノカのために破滅することないよー、もっと穏やかな恋だってあるぞーと、もやもやするのです。

私は、ナノカの魅力に開眼するのはまだ時間かかりそうだから、ナノカノカレというよりは「鷹人の彼女」って感じに見えるのでした。
ファム・ファタルは魅力的だけど、離れてみていたい、そばにいたくないって思うからなのかなあ。)


この作品を手にするきっかけ

haretarabook.com


SNSとナノカノカレの相性はすごいです。こうして、楽しんでる様子を見せてくれる人がいなければ、手に取らなかったと思うから。感謝。

*1:まあ心中覚悟したわけで、それは1つの解決策だから、気持ちが楽になったのは察するけれど